『・・・・・・ずく、雫』


懐かしい声に、目を開ける。


そこには、ずっと待ち焦がれていた、あの人がいた。


『――――!』


嬉しくて、愛おしくて。


名前を呼ぼうとしたけど、その声は風に溶けて消えていった。


彼が優しく微笑む。


その手に、その顔に、触れたくて、手を伸ばすけど。


その手は何にも触れることはなく、ただ空を切るだけだった。












「ぅ、ん・・・・・・?」


ひやりとした、冷たくて硬い感触。


ゆっくり目を開けると、灰色の壁が視界に入った。


さっきのは、夢・・・・・・?


身体を起こそうとすると、腕が何かにくくりつけられてることに気づいた。


これじゃ、起き上がれない。


首だけを動かして腕の方を見ると、私の腕はベッドの柵に縄で固定されていた。


縄が肉に食い込んで、動く度に激痛が走る。


今私が寝ているベッドもマットレスとか敷いてなくてまるで収容所みたいなベッド。


ああ、私捕まっちゃったのか。


そう理解するのに、時間はかからなかった。


首が動く範囲で、部屋の中を見渡す。


その部屋は殺風景で、置いてあるのもこのベッドと部屋の隅にある椅子一つだけ。


コンクリートがむき出しで、全体的に灰色で、なんだか薄気味悪かった。