時計の音がカチ、カチと鳴る。

ペンが紙をこする音、空調の音、生徒のささやき声。静かな教室なりに音はたくさんある。



だけど。


それ全部を集めてもこのドキドキ鳴っている心臓の音が聞こえちゃいそう。



おそるおそる、目を上げて灰野くんを盗み見る。


大きな窓から差し込む日差しが灰野くんの茶髪を金色に輝かせていた。


ゆっくりページをめくる綺麗な指先。優しい動き。


落ち着いているクールな雰囲気。

……どきどきする。
灰野くんの全部に目が行っちゃうよ。


あたしの視線、しつこかったかな?


ふいに灰野くんが視線をあげて……。


バチンッと目が合う。
すぐにそらしたけど、心臓は加速していく……。


――あぁ、もう。だめだ。
全然集中できない。



「「……っ、ちょっと休憩してくる!」」



それは見事なほど同時に、声が重なった。


あたしと、灰野くんのふたつの声が。



灰野くんも、あたしと同じようにまん丸な目であたしを見ている。