隣にいた彗がひょいっと灰野くんの答案用紙を引っこ抜いた。


「灰野が10点って!しかもこれなに?問1だけ全問正解であとは白紙?」


きっと灰野くん、テスト中に寝ちゃったんだね……。


「彗の声スピーカーかよ」


灰野くんの声にかぶるように、数学の先生がパンっと手を叩いた。


「はいはーい、じゃあ試験前にも伝えておいたように、今回20点以下または試験で二回以上赤をとったひとは夏休み補習だからなぁー」


「あー!そういうこと!」

なに?彗、いきなり叫んでどうしたの?


「灰野やっさし……うける」


彗は肩を震わせながら笑っていて、灰野くんは「うざ」というし。


「何?」


首を傾げたら、彗が口を開いた。


「だからぁー」

「言わなくていいから!」


灰野くんは逃げるように自分の席に戻っていった。