藍田 胡桃 side*





……行っちゃった。灰野くん。



「何もなかったから、付き合ったにも入らない」って灰野くんは言っていたけど、灰野くん覚えてたじゃん。


それでも「なにもなかった」になるの?



飛び散ったガラスが太陽の光を含んで、プリズムのように輝いて見えた一瞬のスローモーション。


七色の光が舞い散る下、真っ赤な顔をした灰野くん。


あの思い出はあたしの中では宝物なのに。


「忘れてほしい」って願われるなんて思わなかった。



冷たい視線、冷たい言葉。


灰野くんはあたしとのこと、本当になかったことにしたいんだね。