【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

50メートル泳ぎ切って、プールサイドに上がる。


「灰野くん泳ぐの速いね」


いつの間にかストップウォッチを首から下げている藍田さんが俺のレーンに立っていて。


「え……。見てたの?」


俺の脳が一気に活性化されていく。


「うん!……かっこよかった」


なに、その、わかりやすいお世辞。
ふらっとした。


「いつもは、ちゃんと飛び込めるから……」


なんで今見られんの。
うわもう最悪、ダッサ。


「灰野くんって、前もみたけどお腹……」


赤いって?打ったからな。
ダサいからそんな見ないで。


「割れてる……っ」


藍田さんのキラキラした目がふいっと床を向く。


何が割れてんの?タイル?
きょろきょろとあたりを見回すと、


「あ、佐藤君飛び込んだ」


ピッと遅れ気味に藍田さんがストップウォッチを押した。適当だなぁ……。