そのあとの授業全部を返上して読み上げた数冊の『僕壊』。


読み切った俺が壊れるかと思ったほど、甘いやつだった。



しかもさらっと歯の浮くようなセリフを普通の男子高校生が呟き、超絶至近距離で愛を囁く。


ファンタジー!


無理。絶対に無理だ。



そんな俺はクラスメイトの言葉にまでとどめを刺された。


『胡桃ちゃんって、ナギだと思った。灰野くんっていうのがそもそも意外だよね』


意外。
がっかり。
ファンタジー。


『胡桃ぃ、』

『なにぃー?』



もうカップルじゃん、あれ。


俺って何なんだろう。



『僕壊』からほど遠いことしかできなくて。


ていうより何もできなくて。


あげく、キス失敗して。

そりゃ、”がっかり”だっただろうな。


――――消えたい。