横目で見た藍田さんは、大きな目を熱っぽく潤ませて俺を見上げている。


そ……、そんな目はズルくない……?


下げた眉に上気する頬、そんなズルすぎる表情をして、さらにぷるんとした唇がゆっくり開いた。


「……手」


「手?」


「もう一回手、繋ぎたい……今」


掠れかけのたどたどしい声が、ドクンと心臓を大きく揺らす。



わははっと、山本たちが盛り上がってる隅で、俺たちの間だけしんっとした。



―――手くらい。そんなの余裕だ。


強気な言葉を頭の中で唱えてゴクリと唾を飲みこむ。



「……いいよ」



俺は藍田さんの手のひらをそっとつかんだ。


弾けそうな心臓を悟られないように冷静に言葉にする。


「……こんなんでいいの?」


「はい……」


誰にも見えないようにつないだ手が、嘘みたいに熱くなっていく。


「なにそれぇ!?」


彗たちの軽快な笑い声にふたりそろってビクッとした。


誰かひとりがこっちを見ればアウトな状況と相まって、藍田さんの伏せた目がちらっとこっちを見るたびに、心臓がばかみたいに跳ねあがる。


「なんかあたしたち、イケナイことしてるみたいだね……?」


そんな嬉しそうに言うのって、ずるすぎない?