「灰野くんありがと……」


真っ赤な顔して俯く藍田さんを視界に入れてしまった。


ぎゅっと、手のひらに力が入る。


そしたら藍田さんも、同じくらい力を入れて返した。



「……これだったら、怖くない?」


相変わらずそっちは見れないけど藍田さんは「うん」とすぐに答えてくれた。


「……あたしちょっとズルしたけど」

「ん?」


「ほんとは……怖くないって言ったらどうしますか」


藍田さん嘘つけないタイプだもんね。

てか、わかってるよ。だけど


「怖くないの?」


って白々しく言っておくね。



「だったら、灰野くんは手離しちゃうよね?」



目を伏せる藍田さん。

なに、この可愛い生き物?

そんなの、

「……怖いってことにしといたら、いんじゃないの」


藍田さん、はにかんでる。

……かわいいね、ほんとに。


「ありがと……灰野くん」




長い髪がさらりと風に揺れる。


「……うわ、いい匂い」


藍田さんて、なんで無駄にいい匂いするんだろう。


そういう生き物なの?


「なにそれ……」


「え?」


やべ、声にでてた!?


「……なんでもない」


「はい……」


藍田さんがくすくすと笑う。繋いでない方の手を嬉しそうに口元にあてながら。


「今日のこれも、お昼の散歩も……あたしは何回も思い出して忘れないけど……それはいい?」


「……ん」


少し頷くと、笑みを深めて大きな目が細まる。


だからなんでそんなに可愛いの。


……めちゃくちゃ好き。