邑生side

年に一度。
一般公開される文化祭。
男子校というだけあって、他校の女子がたくさん来るこの日は、校内もかなり浮足立っている。

トントントン

トントン

あちこちで響く準備の音。

「だるーいなぁ。:」

クラスメイトの匠が手を休めながら呟く。

うちのクラスは、メイドカフェならぬ、執事カフェ。
執事に扮した男子がおもてなしするというカフェ。

ここら辺では進学校で有名な学校とあって、物珍しさに一般客も多くて文化祭だけは結構盛り上がる。

「可愛い子とかきたらいいなぁ。」
「はやく、ペンキ塗れよ。学祭まであと3日しかないんだから」

「邑生のお気に入りの子も来るんじゃないか?」
恒星が、ニヤニヤしながら自分をみる。

「うるさい」
はやくやれよ!とペンキの筆を渡す。

はいはい、と作業に戻る恒星。

本当は来てくれたらなんて毎日考えている。
姿だけ見れたらなんて

もし、話ができるのなら・・なんて。

君の声が聞きたい。
君と話ししたい。

そんな思いはあるのに、
自分のことなんて彼女の視界に入っているか、
そもそも自分を知っているのか不安で見ていることしかできない。

手を伸ばせば届く距離なのに。
彼女には届かない。