糸side

近くで見た、彼は眼鏡の奥からまつ毛が長くて切れ長の瞳が見えて
さらさらの黒い髪がよく似合う男の子だった。

ドキン
ドキン

胸の音が聞こえるんじゃないかってくらい高まって、
彼が戻った後は顔をあげられなかった。

その様子を見ていた奈々ちゃんが怪訝そうに私を見ている。

「彼だった」
「えっ?」


奈々ちゃんは事態を飲みこめなくて不思議そうにしている。

「・・・電車の人・・・だった」

5秒くらい沈黙してから、奈々ちゃんはえーーーっと声を上げそうになったので、あわてて奈々ちゃんの口を手で覆った。

「しーーー!、」
ごめんごめんと奈々ちゃんは言いながらも
動揺は隠しきれないのか
キョロキョロと周りを見渡す。

「あの人だったんだねー。残念・ちゃんと見ていたらよかった。」
残念そうにパンケーキを頬ばる奈々ちゃん。
私も、さりげなくきょろきょろとフロアをみるけれど
食べ終わるまでに
彼の姿を見ることはなかった。