君のこと、教えて

邑生side

執事カフェをするとはいえ、裏方でまったりとするつもりだった。

あまり愛想笑いとか得意じゃないし、
なにより、
接客とか好きではない。

だから、ひたすら、ドリンクを作ったり、パンケーキトッピングしたりして終わる、つもりだった。

あの時までは。


「なんで、裏方なのに、執事の衣装着るわけ?」
恒星が文句言いながら腕まくりをする。

「まぁ、接客足りなくなったら、こっちからも手伝う意味もあるんだろ?
それに邑生、見た目いいんだからさ、フロアでたら女子もたくさん集まるよ」
「めんどうだ」


学年で、5クラスあるけれど、他のクラスのなかで、文化祭が始まってからうちのクラスは客足は途絶えることがない。
カフェというのもあって、女子ばかりのお客さんで、他のクラスに比べると華やかだった。

「僕がでなくても、恒星だって、司だってモテるんだし。」
「あのな・・お前、なかなかいい顔してるんだからさ。もうすこし」

恒星の言葉と重なるようにフロアから声かけられる。

「なぁー、ちょっと人足らないから五番テーブルにこれ持っててくれ!」

接客担当から言われてちょうど五番テーブルのオーダーを作り終えたので
自分が持っていくことにした。

高校生くらいの女の子二人が向かい合って座っているテーブル。
楽しそうな会話が聞こえる。

おまたせしました、、と、テーブルにドリンクを置いた時、目と目があった。

見覚えのある顔立ち。

大きいアーモンドの形をした瞳を大きく見開いて自分をじっと見つめる女の子。


電車の中でいつも見ている彼女がそこにいた。
オーダーしたパンケーキと、ドリンクを置いたとき、目があって
一瞬、お互いに
なんとなく
息を飲んだような気がした。