そこから先は自分でもよく覚えていない。
彼女が話した「職場の駅近くの公園」という言葉だけを頼りに、椋は車を走らせた。仕事柄土地勘はある方だ。椋は頭の中で何ヵ所かピックアップして、手当たり次第に探した。大きな公園から小規模なところまで、覚えている限り探し回った。
雨足はどんどん強くなっていた。梅雨入りも間近だという時期。今夜雨が止むことはないようだった。
そんな中、彼女は公園で何をしているのだろうか?
何があったのだろうか。
焦燥し、動揺しながら彼女の姿を探した。
すると、何ヵ所目か公園で一人の人影が見えた。運転中、雨音の他に何か聞こえた気がしたが、今はそれよりも目の前の彼女の元へ向かいたかった。椋はすぐに車から飛び出し傘を指して彼女の元へと向かった。
大分雨が強かったのか、足元はぬかるみ水溜まりが沢山出来ていた。
泥や雨にも構わずに椋は彼女の元へと駆けた。近づくにつれ、少しずつ彼女の姿が外灯の明かりで見えるようになってきた。
そこに居たのはやはり花霞だった。
全身ずぶ濡れになり、目を腫らしながら呆然としていた。手にはスマホと何かを握りしめているようだった。
焦り花霞の話しを聞こうとしたが、彼女が小刻みに震えているのが気づいて、椋はハッとした。事情を聞くよりも彼女の体調が第一だと気づいたのだ。自分の落ち度を反省しながら、花霞を連れて急いで自宅へと戻ったのだ。
彼女が落ち着いてから詳しい話しを聞いた時は、彼女の前では冷静を装っていたが、心の中では元彼氏の玲という男に対して激しい憎悪を抱いていた。今すぐにでも、玲という男を見つけ出して、殴ってしまいたかった。
けれど、目の前には愛しい彼女が泣いているのだ。傷つけられボロボロになっている。
そんな彼女の前で、怒ったり、置いていったりすることなど出来なかった。今は、花霞の傍に寄り添っていたかった。