「花霞ちゃん……?どうした?何かあったのか………。お願いだ、返事をしてくれ。」


 自分の声だけが虚しく響く。
 やはり何かあったのだ。彼女の様子はおかしい。それに、電話口の相手は彼女ではないかもしれない。
 様々な憶測が頭を飛び交い、椋は顔をしかめて手を強く握りしめた。
 やはり、何の考えもなく探さなければいけないのか。最悪の場合、警察に……と考えた時だった。

 「椋さん………。」というか細い声が聞こえた。
 名前を呼ばれただけでわかる。
 今、花霞は泣いている。

 一気に頭に血が上り、椋は彼女の居る場所へと急ぎたかった。けれど、それは叶わない。
 自分にはまだ彼女に聞かないといけない事があるのだ。


 「花霞ちゃん………大丈夫?何かあったの?今は一人………?」
 『椋さん、………ごめんなさい………私………。』



 あぁ、花霞は泣いている。悲しんでいる。それとも苦しんでいるのだろうか。
 けれど、声と息使いだけで彼女の顔が雲っているのがわかる。
 助けにいきたい。早く、彼女を抱きしめなければ。