立っているのが難しくなり、花霞は「あっ…………。」と、声を出しながらそのまま倒れてしまった。咄嗟に手を着いたが、テーブルに体をぶつけてしまったようで、置いたままになっていた食器が衝撃で床に落ちて割れてしまった。
 カシャンッという、大きな音が部屋に響いた。

 花霞はソファをよじ登るように立ち上がろうとしたが、また目眩に襲われてしまい、気持ち悪さからそのまま床に倒れ込んでしまった。


 「気持ち悪い………。どうしたんだろ………。」


 花霞は荒く呼吸を繰り返しながら、ぐるぐると回る景色を見たくなく、目を瞑って冷たい床に横になった。今は自分で立つことも出来ないのだ。目眩が落ち着くまで待つしかない。
 そんな風に思いながらも、床に寝ているというのに、ウトウトとしてしまう。


 「か、花霞ちゃん!?」
 「………ん………りょ、さん………。」


 慌てて起きたのか、椋はオーバーサイズのシャツにゆったりとしたズボンという格好でこちらに駆け寄ってきた。急いで来たのか、前のボタンはすべて空いており、鍛えられた体が見えていた。

 花霞はよろよろと起き上がろうとしたけれど、再度目眩に苦しみ、また目を閉じてしまう。


 「ごめんなさい。………目眩が酷くて転んでしまって。食器も割れてしまったし。………それに、椋さんを起こしてしまって……折角熟睡していたのに。」
 「どっちも気にする事じゃないよ。………体が熱いな。熱があるんだと思う。」
 「熱………?」


 椋は花霞の体を支えただけで、彼女の熱の高さを感じれるぐらい、体温が上がっていたようだった。
 花霞自身は少しだるいぐらいに感じていたけれど、彼の言葉を聞いてから、少し寒気も感じ始めたのだった。