そういうと、電話口からガタガタッと音が聞こえて来た。
 その後も何かの音や、足音、そして車の音が聞こえて来た。

 それらを聞いて、彼がここを探し向かってくれているのがわかった。
 本当ならば安心するはずなのに、花霞は焦りを感じてしまった。
 彼がここに来る前に指輪を探し出さなければいけない。そうしないと、彼との関係が違うものになってしまう。
 そんな事はないとわかっていながらも、不安になるのだ。

 花霞は急いで公園内を探し回った。
 先ほど見た所ももう一度見直した。もしかしたらと思い、花霞は玲が投げたであろう場所ではない所も見た。けれど、やはり見つからない。
 溜め息を付いて、顔についた雨や泥を濡れた手で拭った。そして、ゆっくり目を開けた時だった。
 視界の端で、キラリと光るものがあったのだ。

 「あ………。」


 花霞はすぐにその方向へと駆け出し、その輝くものを取り上げた。
 すると、泥や雨水がついているがそれに負けないようにいつもよりキラキラと輝く宝石がついた指輪があった。



 「あった………。よかった…………。」

 

 花霞は震える手でそれを握りしめた。
 この指輪があれば、椋との繋がりをまだ持ってられるのだ。そう思うと、安心し嬉しくなり、先ほどとは違った涙が出た。