探し始めてから、しばらく経った頃。
花霞が持っていたスマホが振動した。動きが止まらない事から誰からの連絡だとわかり、花霞はスマホの画面表示を見た。
すると、そこには「鑑椋」と書かれていた。
「椋さん…………。」
いつもならばすぐに通話ボタンを押していたけれど、この時は躊躇ってしまった。
今、彼の電話に出てしまったら彼に心配をかけてしまう。そして、指輪をなくしてしまった事もバレてしまう。花霞はそう思い、彼の電話が切れるまで、画面を見つめた。
10回ぐらいのコールが続いた後。
彼の電話は切れた。
花霞はホッして、また指輪探しに戻った。
けれど、また数分後に椋からの電話が来たのだ。それも、申し訳ない気持ちで無視を決めて出なかった。そして、また指輪を探し、また電話が来て、の繰り返しが行われた。
何回目だろうか、花霞は椋からの電話が来た時に、手が濡れているからか誤って地面にスマホを落としてしまった。それを拾い上げようとした時に、通話ボタンに指が触れてしまったのだ。
「あ…………。」
花霞が気づいた時にはもう遅かった。
スマホからは椋の声が聞こえて来たのだ。