16話「涙声の恋心」




 椋がくれた指輪。
 その指輪はただの指輪ではない。
 椋と花霞を繋ぐ指輪だ。


 きっと、彼は花霞が「無くしてしまった。」と言えば、「気にしないで。」と言ってくれるだろう。
 けれど、花霞はどうしてもあの指輪が必要だった。
 あれがなくなってしまったら、彼との関係がなくなってしまう。そんな風に思ってしまったのだ。
 椋は物だけで繋がるわけではない、と言ってくれるだろうし、花霞自身もそうだとはわかっている。

 それなのに、あの指輪をなくしてはいけない。
 そう強く思ってしまった。


 
 花霞が自分の服が汚れるのも構わずに、濡れた地面に手や膝をついて、目を凝らしながら探し続けた。
 広い公園ではないし、彼が投げた方向を見ればすぐに見つかると思っていたけれど、指輪はなかなか見つからなかった。


 「どうしよう………見つからない。」


 髪も濡れ、服にも雨水が吸われてしまい、花霞から雨が落ちているかのように、濡れてしまった。
 けれど、花霞は諦めずに探し続けた。


 「明かりがあれば………あ、そうだ。」


 花霞は、自分のバックからスマホを取り出して、ライトを付けた。それだけでも、一気に少し先まで地面の様子がよく見えた。
 大粒の雨が降ったせいか、すでにあちらこちらに水溜まりが出来ていた。その水溜まりはライトの光を浴びて光っている。水が光を反射させて光ってしまい、指輪の光が探しにくくなってしまうかもしれない。そう思いながらも、泥まみれの手でスマホをかざしながら地面を見つめながらゆっくりと公園内を歩いた。