「浮気したのはあなたじゃない!私はそんな酷いことしない!………人のせいにしないで。」
 「何、言い訳言ってんだ?別れてから2ヶ月ですぐに恋人作って結婚までするなんてありえないじゃないか!」
 「でも、私はそうだった。彼と出会ったのは、あなたと別れてその日だから。」
 「嘘ついてんじゃねーよっ!!」
 「…………っっ!!」


 玲に力いっぱい体を押され、花霞は地面に転んでしまう。
 まるで、あの日のように花霞は地面の上に膝や足をつけて座り込んでしまった。


 「ん?これ……ダイヤついてるのか?すげー………。」


 玲は呑気にそんな事を言いながら、公園内にある街頭の光りに指輪をかざしている。


 花霞は、立ち上がって「返して!」と手を伸ばすが、玲は簡単には返してくれなかった。


 「………リングの後ろにも何か彫ってるのか?」
 「………名前よ。彼の名前があるだけよ。」
 「………ryo、ね……。」


 玲は彫ってあった名前を見つけて、そう呟いた。

 花霞と椋の結婚指輪の裏にはお互いの名前が彫ってあった。それは、椋のアイディアで「自分の名前より、花霞ちゃんの名前を見た方が嬉しいし、俺の名前を花霞ちゃんが見てくれるから。」と言って、店にお願いしていたようだった。


 「one sinって………ハイブランドの指輪なんなしてんのかよ。玉の輿狙いか。」
 「っっ!違うっ!………お願い、それだけはやめて………。」