「しょうがない、今日は僕からおかえりキスをしてあげよう。」


 椋はそう言うと、花霞の体を優しく引き寄せた後、いつものように軽いキスをした。
 

 「仕事、お疲れ様。」
 「いえ………。朝御飯とかもありがとうございました。」
 「いいんだよー。花霞ちゃんの仕事の事も聞いてなかったから、逆に早く起こしちゃってごめんね。遅い勤務の時は、ゆっくりなんだね。」
 「はい………サービス業なので、結構遅い時間になってしまうので。」
 

 今日の朝、花霞は朝早い時間に椋に起こされた。仕事の時間を聞いてなかった、と申し訳なさそうにしながらも、心配して起こしてくれたのだ。
 椋は仕事があるからと、早く起きて朝食まで作ってくれていたのだ。
 花霞はいつもより少し早い時間だったが、彼と一緒に朝食を食べた。そして、椋はお弁当まで作ってくれたのだ。


 「あと、お弁当もありがとうございました。とってもおいしかった………。」
 「そう!よかったぁー。俺、料理好きだから、喜んでもらえるとますます頑張れるよ。」
 「あ、でも、私も手伝うので!今日の夕食会も……。」
 「もう出来てるよ。今日は、定番の肉じゃがです。」
 

 そういうと、花霞の荷物を持って、嬉しそうにリビングへと歩いていく椋を、花霞はパタパタと追いかけた。その表情には戸惑いなどなく、笑みだけがあった。