それから長い月日が流れた。



 「椋先輩!」
 「あぁ、遥斗か」
 「疲れました………ラーメン食べて帰りませんかー?」
 「またかよ………まぁ、いいけど」


 高確率でラーメンに誘う遥斗に苦笑しながら椋は帰り道を歩いた。
 
 2人は無事に警察官になった。
 椋は勉強もできたし、運動神経も抜群。そして、喧嘩も止めてからは無愛想ながらも優しいと評判で、警察にもすぐになれると言われていた。が、遥斗はかなり苦戦した。特に勉強は苦手だったので、椋に教えてもらうことが多く、なんとか警察官になれたのも、彼のおかげだろうと思っていた。

 今は、とある組織で潜入捜査していた。
 先に椋が入り込み、その後に遥斗が入ってきたので、変わらず「先輩」と呼んでも不自然ではなかった。初めはよそよそしく初対面風にしていたが、日数が経つうちに組織の仕事を共にこなすようにもなっていたので、仲良く接するようになってきた。だが、油断は禁物なので、あまりお互いには深く踏み込まないようにはしていた。が、組織から離れると少しだけ肩の力が抜けてしまうのだった。


 「あ、そう言えば……あの花屋の女の子。仲良くなったんですかー?」
 「………おまえ……」
 「まさか、俺が気づかないとでも?毎日あの道を通ってるんですよね?楽しみなんですよね?」
 「遥斗、うるさい」
 「否定しないところが、真面目ですよね」


 遥斗は笑いながら椋の顔を見ると、めんどくさそうに顔をしかめてはいるが、耳が少し赤くなっている。やはり気になっている女の子がいるようだった。


 「…………でも、この髪型とか服装何とかしてからですよね」
 「……………」


 ドラッグの組織に潜入しているため、今は少しチャラく見えるように金髪にしたり派手な格好をしているのだ。
 それを指摘すると、椋も同じように考えていたのだろう、無言で自分の服装を見つめていた。


 「付き合った報告してくださいね」
 「…………真面目に仕事しろ」
 「はーい」


 周りから見たら危ない2人組にしか見えないだろう。
 だが、椋と遥斗はヒーローになるという夢を叶えたのだ。晴れ晴れとした気持ちだ。
 今からどれだけの人を助けられるかはわからない。


 けれど、遥斗は椋と一緒ならば大丈夫だろう、そう思った。隣を歩く、少し無愛想な椋を見て、遥斗は微笑んだ。

 どんな時でも、遥斗にとって椋はヒーローなのだから。



              (おしまい)