「怒ると手がつけられなくて、よく殴られたり、タバコの火を押し付けられたりしてたよ。でも、若いから傷は綺麗になくなるから大丈夫だ」
 「………でも、痛かったでしょ?」
 

 自分の父親からそんな事をされる。
 遥斗にとって衝撃的な事だった。そんな事をする親がいるのだ初めて知った瞬間だった。だが、椋が嘘をつくとは思えなかったし、何より傷跡が生々しく残っているのだ。
 想像するだけで、痛くて、胸がちくりと痛み涙が浮かんでくる。何故自分が泣きそうなのかわからなかった。そんな遥斗を見て、椋は小さく笑った。


 「何で、おまえがそんな顔するんだよ……」
 「だって………椋は悪い事でもしたの?だから怒られたの?」
 「食べ方が汚いとか、テストが満点じゃないとか。目付きが悪いとか酒がないとか……まぁいろいろ。反抗したこともあるから、俺が悪かったのかもな」
 「だからって、叩いちゃだめだよ!」


 椋の話を聞いていて、遥斗は思わず立ち上がって大声を出していた。そんな遥斗を驚いた顔をして見た後に、椋は優しい顔で笑った。