「で、その隣が空き部屋だよ。少し俺の荷物を置いてあるけど、あと避けるから。」


 そう言ってドアを開くと、大きな窓がある綺麗な部屋に椋がキャリーバッグを置いた。その部屋は以前、玲と2人で住んでいた部屋よりも広い作りになっており、花霞は驚いてしまう。


 「こ、こんな大きな部屋を使ってもいいの……?」
 「もちろん!結婚したんだから、この部屋よ住人だよ。どうぞ。」
 「わぁー………。ありがとうございます!」
 「家具も買い揃えようね。明日は買い物だな。楽しみだ。」
 

 椋と話している時、廊下の出口に一番近い部屋があるのに花霞は気がついた。
 あの部屋は何があるのだろうか。そんな事を思い椋に訪ねた。



 「椋さん。あの奥の部屋は、何に使ってるの?」
 「あぁ………あそこ?あそこは、俺の書斎だよ。」
 「そ、そうなんだ………。」


 椋の言葉が耳に入った瞬間、花霞はドキッとしてしまった。
 椋の声が先ほどよりも温度のない冷たい口調になっていたのだ。
 昨日あったばかりなので、彼の事を詳しい訳ではない。
 けれど、倒れた花霞を助けたり、楽しそうに新婚生活の話をしていた椋からは想像出来ないような冷淡な声だった。


 「あぁ。花霞ちゃんに1つだけ守って欲しい事があるんだ。」
 「守って欲しい事?」
 「そう………あの部屋。僕の書斎には絶対に入らないでね。」
 「え…………。」