ShortStory 3 「ヒーロー 後編」




 その日はこっそり午前中は学校をサボり公園でずっと話をしていた。
 椋は「どうして警察にこだわるんだ?」と聞いてきたので、遥斗が「ヒーローはいないのはわかってる。けど、ヒーローみたいな人を守るって言えば警察だろ?だから、警察になりたいんだ」と言うと、椋は笑いながら「単純な奴だな」と言った。


 怖い雰囲気は一転して、椋はとても笑う男だった。
 これが彼の素顔なのかもしれない。そう思うと、彼の秘密を知れたようで遥斗は嬉しかった。遠くから見ていたら気づかなかったけれど、椋の腕や首、頬などにはうっすらと傷があった。最近のものではなく、昔のものだろう。薄くなっているものが多いのできっと昔のものかもしれない。それをまじまじと見てしまったからか、椋は遥斗の視線に気づいて「気になるか?」と聞いてきた。遥斗はどう答えていいのかわからずに、正直に「うん」と返事をすると、椋は苦笑した。


 「………おまえは不思議だな。こんな俺に喧嘩以外でつきまとってくる奴はいなかった。大体は怖がるか、逃げるか。そして、喧嘩をふっかけてくるか、だな」
 「…………」
 「…………これは、親父にやられた怪我だよ」
 「え………親父ってお父さん?」
 「あぁ………」


 細い腕の傷を擦りながら椋は遠い目をしていた。それは、怒りでもあり、悲しみでもある。でもどこか寂しそうに見えた。