☆こちらは本編や番外編のネタバレになる話しが書かれています。本編、番外編を読んだ後にこちらをお楽しみください!





   ShortStory 3 「ヒーロー」




 自分の全てを持っている人だ。
 目の前の彼を見て、遥斗はそう思った。

 小さな顔に、少しつり上がった綺麗で大きな瞳、サラサラの黒髪と少し焼けた肌。身長も高めで細身。Tシャツとジーパンという姿なのに、周りの人とは違う。どこか格好よく着こなしている。モデルのように全身が整っていた。

 彼の名前は鑑椋。
 そして、遥斗の通う小学校の高学年であり、皆から恐れられている男でもあった。ケンカばかりしており、生傷が絶えない体。だが、負けなしの強さで、遥斗が住む地域では噂になるほどだった。
 ほとんど授業に出ていても寝ているばかりなのに、秀才だというから驚きで、そのため教師は何も言えないという。

 容姿端麗、英明果敢、スポーツ万能。と、誰もが羨む人なのに、周りからは恐れられているのだ。
 だが、女の子にはモテているようで、いつも彼に言い寄る女の子が彼の周りにはいたが、椋はあまり興味がないようだった。

 いや、彼は何にも興味がないのだろう。
 だから、いつもつまらなそうにボーッと歩いているのかもしれない。そう、遥斗は思っていた。


 「勿体ない!勿体ないよな………」
 「………突然何言ってんだよ」
 「椋さんの事だよ」
 「何だ、またその事か」