エピローグ




 椋と出会ってから1年後。
 雨に打たれていた花霞に声を掛けてくれ、助けてくれた椋と出会った時と同じ日。


 花霞は真っ白なドレスを着て、小さな教会の前に立っていた。

 髪は綺麗にアップしてまとめられ、淡い色でメイクされた顔はキラキラと光っていた。髪には大好きな花たちが咲いており、椋を助けてくれたラベンダーも一緒に添えられていた。


 「あー。何だか緊張するな。本当に俺で良かったのか?」
 「はい。滝川さんは私たちの命の恩人ですし。椋さんは言葉では言いませんけど、滝川さんの事をすごく尊敬しているので、嬉しいと思います。私も父がいないので、こうやって引き受けて貰えてとっても嬉しいです。」


 ヴェールの下で微笑みながら滝川を見ると、彼も緊張しながらも笑ってくれていた。
 
 両親がいない、椋と花霞の結婚式。そのヴァージンロードを歩くのを滝川にお願いしたのだ。
 椋は恥ずかしくて言えないようだが、父のように慕っていたのが滝川だと花霞は知っていた。そのため、それを提案すると椋は驚きながらも、「いいんじゃないか。」と言ってくれた。
 滝川もすぐに承諾してくれたので、花霞は今、滝川の腕を優しく掴んでいた。