どれぐらい眠っていたのだろうか。
 目を覚ます頃には、夕方になっていた。
 入院生活で体力がなくなっているのを花霞は感じていた。


 「ん………花霞ちゃん?」
 「椋さん………起こしちゃったね。まだ、寝てていいよ。」


 花霞は彼のシャツを羽織っていた。寝てしまった花霞に椋が着せてくれたのだろう。
 起きて、ベットに座っていた花霞を見て、椋も同じように体を起こした。


 「いや1回起きて、君の寝顔を見ていたんだ。ウトウトしてしまってただけだよ。」
 「寝顔なんて、沢山見ていたでしょ?」
 「でも、今日の花霞ちゃんは少し笑ってたよ。なんか、嬉しそうだった。」


 そういうと、椋は微笑みながら顔を寄せて、「おはよう。」とキスをしてくれる。このベットではいつもしていた事なのに、懐かしく感じてしまう。


 「ねぇ、花霞ちゃん。ちょっと結婚指輪見せて。」
 「え、はい………。どうしたの?」


 突然のお願いに、花霞は不思議に思いながらも彼に左手を差し出した。
 すると、椋はその手の甲にキスを落とした。
 そして、彼はいつの間にか手に隠し持っていた物を、花霞の左の薬指にはめた。
 そこには結婚指輪の上に、大きなダイヤモンドが輝く指輪があった。
 その形は、誰もが憧れるリングだ。


 「これって、婚約指輪………。」
 「前は終わりが見えた結婚だった。だから、もう1度、君と結婚をして、誓いたいって思ったんだ。俺が必ず花霞ちゃんを幸せにする。守っていくから。………だから、これからも夫婦でいてもらえますか?」

  
 真剣な眼差しの椋を見つめ、花霞は感動の涙を堪えて、ニッコリと微笑んだ。


 「はい。これからも椋さんのお嫁さんでいさせてください。」


 2つの指輪がはめられた左手を、椋は強く握りしめ、そのまま花霞を強く強く抱きしめた。
 「花霞ちゃん、大好きだよ。」と繰り返す椋に、花霞はクスクスと笑いながら、「私も大好き。だけど、苦しいよ。」などと、照れ隠しで返事をする。



 そんな2人の時間はきっとキラキラと輝く、花のような日々になる。そんな予感がしていた。