「…………また、椋さんのおうちに帰れて嬉しいな。」
 「うん。俺も一緒に帰れて嬉しい。それも、花霞ちゃんのおかげだ。」
 「違うよ。椋さんが私を助けてくれたから、だよ。椋との出会いがあったから、私はここに居るの。だから、昔の椋さんに感謝だね。」
 「………………あー、花霞ちゃんには敵わないな。」


 椋はキョトンとした後に、正面を向いて運転をしながら、笑った。


 「え、どうして?」
 「可愛いすぎるなって思って。そんな事言われて嬉しくない男はいないでしょ。今、運転してなかったら確実に抱きしめてた。」
 「………そ、それは残念………です。」
 「え………。」
 「だ、だって………病室だと、そんなに抱きしめて貰えなかったし、体も上手く動かなかったし………。ギュッとしてもらいたかったな………って思って。」



 自分でも大胆な事を言っているのはわかっている。けれど、花霞だって椋の事が愛しくて仕方がないのだ。
 やっと本当の夫婦の形になれたというのに、彼に触れられないのは、少し寂しかった。それは自分が無茶をして怪我をしてしまったのが原因だとわかっている。だからこそ、元気になったら、彼を感じたいと思ってしまっていた。

 本音を漏らしてしまってから、一気に恥ずかしくなり、花霞は顔を真っ赤にしながら俯く。
 車のエンジンの音と自分の鼓動だけが耳に入る。
 椋がどんな顔をしているのか、花霞は怖くて確認する事はできなかった。

 すると、椋の優しい声が聞こえてきた。