38話「2回目のプロポーズ」





 花霞が歩けるようになった。
 自分の力だけで日常生活を過ごせるようになったため、医者から退院出来ると伝えられた。
 それは入院から約1ヶ月が経とうとした頃だった。


 花霞は椋と共に退院をして、久しぶりに家に帰る所だった。



 「この車も久しぶりだなー。懐かしい!」
 「花霞ちゃんにとっては、しばらくは久しぶりの事ばかりになりそうだね。」
 「うん。ご飯もそうだし、お風呂も!まず、洋服だって久しぶりだったから。嬉しいな。」
 「まだ病み上がりなんだから、無理はしないでね。」
 「うん、ありがとう。」



 花霞が怪我をしてからと言うもの、椋は心配性になっていた。
 目の前で大量の血を流し倒れてしまい、しかも命の危険もあったようなので、椋が神経質になってしまうのも無理はないのかもしれない。
 けれど、もう花霞は元気になったので、椋に心配をかけたくない、とも思っていた。


 「今日は花霞ちゃんが食べたいものを作るよ。何が食べたい?」
 「やった!じゃあー………んー………ハンバーグかな。」
 「了解。楽しみにしてて。」


 椋との何気ない普通の会話。
 少し前までは、彼の事の秘密が気になったり、彼と別れてしまうのかと不安になっていた。
 けれど、今は違う。

 何を食べようか。どんな所へ行こうか。
 考えることは楽しいことばかりなのだ。
 そして、彼との関係が終わってしまうという、カウントダウンもない。
 それが何よりも幸せな事だった。