「かがみぃーーっっ!!」
「………っっ!」
椋を呼ぶ怒声が聞こえた。
それは、懐かしくもあり、聞くと背筋が伸びるそんな声だった。
その声を聞いて、ハッとした。
花霞の体を抱きしめながら、その場の状況を見ると、檜山のボディーガードが数人倒れていた。それと、まだ銃声が響いていたり、怒鳴り声も、聞こえるのだ。
檜山とボディーガード、そして取引相手の他にも何人かが増えているのがわかった。
そして、拳銃を手にしながら椋達に近づく人物を発見した。
椋はその男を見て、彼らの正体を知った。
「滝川さん………。」
椋の上司であった警視の滝川が何故かこの場所に居たのだ。
椋は唖然としながら、彼を見つめた。
「何やってんだ!周りを見ろ!辞めたらこんな使えない男に成り下がったのか!?」
「………俺は……。」
「しっかりしろ!彼女の守るんだろ!?ここは抑えるから、撃たれた彼女の手当てが先だ。さっさと離れろっ!」
「……………っっ!!」
滝川の必死の叫びに、椋は花霞を抱きかかえてその場から離れた。
拳銃の音が響く中、必死に彼女を抱きしめて、ラベンダー畑の中へと避難した。
椋は自分のジャケットからハンカチを取り出して彼女の傷口に当てるが、あっという間に血に染まってしまう。
椋はシャツを脱いで、それを花霞の体に縛るように固定して、止血をした。そして、すぐに救急車を呼び、花霞に声を掛け続けた。
ラベンダー畑の土は真っ赤になり、その場だけ血の匂いが漂っている。
椋は手が真っ赤になるのもかまわずに、彼女の傷跡をシャツで押さえ続ける。
「お願いだ………止まってくれ。………彼女を、助けたいんだ………。」
少しずつ呼吸が浅くなる必死の思いで、願った。
「花霞ちゃん。………死なないで…………。また、笑って欲しいんだ………。」
救急車が到着する、僅かな時間。椋にとっては、とても長い時間に感じられた。