「ま、もりたか……たから………。」



 花霞は自分の手紙を見て追ってきてくれたのだ。守りたいという一心で。
 
 それが嬉しくも、悲しくもあった。
 あんな言葉を最後に別れたというのに。
 期間限定の偽りから始まった、バカのような結婚だというのに。
 自分をそこまで愛してくれた彼女の気持ちが嬉しかった。そして、答えられなかった自分が悲しかった。



 「………っっ………。」
 「生きて………ほし………。」


 突然、彼女の言葉が途切れる。
 花霞の顔は真っ白になり、瞳も虚ろになっている。
 椋は咄嗟に彼女の体を強く抱き寄せたけれど、花霞の体の力が抜け、瞳も閉じられてしまう。

 椋は彼女を抱き締めながら、ただ呆然とした。
 花霞の体から血液が、体温が流れ出ているのがわかる。
 それなのに、どうすればいいのかわからない。
 花霞からもう離れたくない。ずっと抱きしめて、守り続けたい。
 そんな思いで彼女の弱々しい鼓動を聞いていた。