「昔のあいつは、仕事ばかりでいつも仏頂面だったんですよ。笑っているのは、仲のいい後輩と居る時ぐらいでしてね。………こんな嬉しそうに笑う鑑は初めて見ましたよ。とてもいい写真だ。」
 「…………そんな………。」
 「鑑はとても幸せそうで安心しました。これからも、あいつを支えてやって下さい。」


 滝沢は、まるで自分の息子のために頭を下げている父のように、真剣な様子だった。
 花霞は驚きながらも、滝川は椋の事をこんなにも大切に想ってくれている事が伝わってきた、胸が苦しくなるぐらいに嬉しかった。


 「はい。椋さんを絶対に幸せにします。」
 「………ありがとう。……鑑が何故君を選んだのか、少しわかった気がします。」
 「そう、なんですか?」
 「はい。………この写真、預かっていてもいいかな?必ずお返しします。」
 「はい。よろしくお願いいたします。」


 花霞は滝川と同じぐらい深くお辞儀をして、彼の行く先を探してもらえるようお願いをした。


 その後、滝川と連絡先を交換してから別れた。出口まで送って貰う途中に、「あいつはエリートではなかったんですよ。将来はそうなると確信はしていましたけど。」など、昔の椋の事を少し教えて貰い、花霞は少しホッとする時間が出来た。



 滝川に出会えた事を感謝しながら、花霞は椋が昔働いていた場所を後にしたのだった。