32話「昔の仲間」





 花霞は椋を探しに家を飛び出したけれど、どこに向かえばいいのかわからなかった。
 けれど、1つだけ頼りたい所があった。
 そこに向かって、花霞はタクシーに乗り急いだ。彼を助けるためには、少しでも時間がほしかったのだ。


 祈る思いで、花霞は椋の無事を願い続けていた。 




 「すみません。こちらに鑑椋さんについてご存じの方はいませんか?こちらに勤務していると思うのですが、どこにいるのか知りたいのです。」
 

 大きなビルの1回。そこは警視庁の建物だった。自分には全く関わりのない場所のために、花霞は少し緊張していたけれど、受け付けの人が笑顔で「お待ちくださいね。」と返事をしてくれたので、ホッとする事が出来た。


 けれど、なかなか返事は帰ってこず、受け付けをしてくれた女性も、何故か焦っている様子だった。何かあったのだろうか?


 花霞はおどおどとしながらも待っていると、「お待たせいたしました。」と、後ろから声が聞こえた。

 そこには、椋よりも年上のガタイの良い男性がいた。白髪混じりの短髪に、少しシワのある顔。威厳がある風貌だったけれど、瞳が大きく口元が微笑んでいるため、花霞は少し優しさを覚えた。雰囲気が彼に似ているような気がしたのだ。