30話「近づく真実」



 花霞の日々は変わらない。
 朝起きて、職場に行き、そして帰宅する。
 けれど、ここ約5ヶ月の甘い時間が一瞬にしてなくなった事に戸惑っていた。

 椋は自宅に帰ってくる事はなく、2日経った。まだ2日のはずなのに、花霞にはとても長く感じられた。
 起きても「おはよう」とキスをしてくれる人はいない。おいしい朝食もない。帰ってきて部屋は暗いままで、彼が「ただいま。」と帰ってきて、温かさを分けてくれる事もなかった。

 彼が居た証拠は部屋のいたる所に残っている。花霞の左手にある結婚指輪もそうだった。今、椋の左の薬指には同じ指輪があるのだろうか。
 もしなかったら?
 そんな事を考えるだけでも苦しくなっていた。



 花霞が椋に話したかった事は、半分も伝わっていなかった。彼の書斎で見た事で、花霞は彼が何をしているのか、何となくだがわかったような気がしていた。
 止めようと思ったけれど、きっと彼は止まらないだろう。そうも思った。

 けれど………その前に別れを告げられてしまったのだ。
 それが花霞にとって何よりも辛かった。
 

 「決まっていた事って………どうして?」


 確かに、彼は期間限定の半年の結婚を契約しようとした。けれど、離婚してもいいという約束だったはずだ。それなのに、彼は約束よりも早く離れる事を望んだ。
 それが何故なのか。
 花霞はわからなかった。