29話「突然の宣告」





 花霞は待っていた。
 椋が帰ってくる事を。

 あんな物がどうして彼の書斎にあるのかはわからない。
 今まで、ドラマや映画でした見たことがなかった拳銃。それを自分が触れる日が来るとは思ってもいなかった。書斎に隠してあったものが、本物なのかは花霞にはわからない。けれど、あれは本物の拳銃だろうと、花霞は思った。

 そして、震えが落ち着いた頃。
 花霞は泣きそうになるのを堪えながら、もう1度、彼の書斎に足を踏み入れたのだ。


 彼を知りたい。
 椋を守りたい。


 そう思ったのに、拳銃を見ただけで逃げてしまったはダメだ。そう、強く思うようにしたのだ。

 彼がそれを持っているのか。知らなければいけないのだ。椋がどんな人なのか、わかったとしても花霞はここからは逃げない。そう思っていた。

 椋は、花霞の事を全く知らないのに助けてくれた。もし知っていたとしても、信用して共に暮らすことを提案してくれたのだ。

 それならば、花霞も同じようにしたかった。
 それに、どんな事を知っても彼が好きだと言う気持ちはなくならないと思っていた。


 これ以上、真実を知るのは怖い。
 そう思ってしまうのも事実だった。

 彼の書斎に入って、本当に知ってしまってもいいのかと迷わないはずはなかった。けれど、彼を助けたい。
 椋とずっと一緒にいたい。
 そのためには、彼を知らなければいけない。

 その思いだけで、書斎に再び入って、今度は机の上に散らばっている資料や、新聞の切り抜きなどを読み漁ったのだった。


 もう1度、拳銃を見ようとも思った。
 けれど、花霞は怖さから見るのを止めてしまい、その書斎から出た。


 後は、彼に話をしよう。
 椋の言葉から知りたい。
 


 花霞は、じっと椋の帰りを待っていた。