「椋さん………。私はまた約束を破るけど、許してくれるかな………。」


 そう呟きながら、決めた事をしようとゆっくりと歩み始める。


 「また、怒られてもいい………。今度は、椋さんを私が守りたい。」


 花霞は、ずっと思っていても決められなかった事をしようと決意した。
 彼を守ろうと思っても、椋が秘密にしている事を聞く勇気がなかった。そして、さりげなく聞いたとしても、彼は教えてはくれなかった。

 花霞には知る必要がないのかもしれない。
 彼は教えたくないのかもしれない。

 けれど、寝れなくなるしている事。仕事が終わってからも夜遅くまで作業をする理由を。そして、あんなに怪我をしてボロボロになるわけを、知りたかった。
 そして、何でもいいから彼の役に立ちたい。
 そう思った。


 仕事で役に立てないなら、花霞が話を聞いて、少しでもすっきりするのでもいい。
 どんな事でもいいから、やりたい。





 花霞は、その思いでまた書斎のドアを開けた。