「俺を心配して仕事を休んでくれたんだよね?ごめんね。………せっかくだから、今日はゆっくり休んでて。」
「椋さんは…………?」
「俺はそろそろ着替えて出掛けるよ。」
「仕事、行くんですか?」
「ごめんね。今日はそんなに遅くならないから。一応、報告とか……ね。」
確かに怪我をした状況などを報告したりする事は必要かもしれない。わかってはいるけれど、昨晩あんなに苦しんでいた彼を行かせてもいいものなのかと悩んでしまうのだ。
「………じゃあ、今日は久しぶりに外食でもしようか。2人でちょっとしたデートをしよう。心配掛けたお詫びにも………早く帰ってくるから、ね?」
「………椋さん、ずるい。」
「ははは。ごめんごめん。」
椋は楽しそうに笑っていた。
そして、すぐに準備をして仕事へ行ってしまった。
残された花霞は、また彼を待つことになった。
けれど、今度はただ待っている事は出来るはずもなかった。
椋が何をしているのか。どんな秘密を持っているのか、知りたいと強く思った。
花霞は彼に助けられ、幸せを貰った。それは期間限定の幸せだったかもしれない。けれど、彼から貰ったものは、全て本当の笑顔と幸福だったと花霞は思っていた。
彼がどんな事を考えて期間限定の契約結婚をしたのかはわからない。
けれど、椋は「好きだ。」と言ってくれた。「本当の夫婦」になれた事を幸せそうに喜んでくれた。それを信じたかった。