そんな気持ちに気づいたのか、椋は花霞の顔を見つめてニッコリと微笑んだ。


 「花霞ちゃん。この結婚指輪もそうだけど、もらった赤い宝石を見るたびに、何だか花霞ちゃんが見てくれてるみたいで、お守りみたいにしてるんだ。」


 そう言うと、シャツの下に着けていた小さなリング付きのネックレスを見せてくれた。
 花霞がずっと昔から使っていたリング。それが彼を守っている。
 椋に言われた言葉は、花霞にとってとても嬉しいものだった。


 「お守りがあるから、俺は大丈夫だから。心配しないで。それに、次のデートも決まったし、それを楽しみにしてて。」
 「………はい。」

 
 椋の言葉は嬉しいものだったけれど、それでもモヤモヤした気持ちは拭いきれなかった。


 「いってきます。」
 「………いってらっしゃい。」


 椋から挨拶のキスをされ、彼は真っ暗な夜へと消えるようにドアから出ていってしまった。



 花霞は、結婚指輪を包むように左手を右手で包んで、祈るように目を閉じた。
 椋が無事に帰ってきてくれますように、と。


 




 この時から、事態が激しく動き出すとは花霞は知るよしもなかった。