「俺が声を掛けて、話した人が倒れてしまった。しかも、その人には帰る場所がないとわかっている。……そしたら、助けるのは普通じゃないですか?」
 「でも………。」
 「何かされると思ってましたか………?」
 「………その………はい。優しさには理由があるのかな、と。」
 「なるほど。」


 花霞の言葉を聞いて、納得したような様子で頷いた。

 
 「じゃあ、納得できる理由があります。」
 「え?」
 「俺、警察官なんです。だから、困ってる人を見たら助けなきゃいけないなって思って。まぁ、職業病みたいなものですね。」
 「………警察官。」
 「これでも、エリートなんですよ。」


 それを聞いて、花霞は妙に納得した。住んでいる部屋はとても広く立派だった。彼は自分より年上のようだけれど、そのまで離れているわけでもない。それなのに、すごいところに住んでいるなと思っていたのだ。
 そして、助けてくれた理由としても、納得できるものだ。休みの日だとしても、倒れている人を放っておく事ができなかったのだろう。

 少しホッとしたのを男は感じ取ったのか、「わかってくれましたか?」と、言って、お粥を食べるようにすすめてくれた。

 花霞は、何かお礼をしなければいけないな、と思いながら、ありがたくそのお粥をいただく事にした。そのお粥は出汁がしっかりついており、優しい味がした。



 「美味しい、です。」
 「それはよかった。」


 花霞の向かい側に座った男は、嬉しそうに笑った。その表情は、自然でとても楽しそうな笑顔だった。



 「あ、着ていた服は、とりあえず洗濯しておきました。もう少しで乾くと思いますよ。」
 「………洋服…………っっ!!」