「あれ?香り変えたの?」
「あ………気づいてくれたんだ。」
まだ、椋の不眠は治ることはなかったけれど、花霞は食事やアロマなどを続けていた。食事は椋が作ってくれるので、不眠に効くといわれる食材を彼に教えて、どれかを入れてもらったり、ピーナッツなどを2人でつまむようにしていた。
そして、花霞は彼のためにアロマを始めてからすっかりハマッてしまった。
お店の人に聞いたりしながら、不眠に効くものを教えてもらったり、自分の好みの香りを探したりしていた。
「これは白檀、サンダルウットの香りで、体の不調や不眠にもいいんだって。私、この香りが気に入ってて…………。それに………。」
「それに?」
「椋さんの名前も、木の名前でしょ?何か似てる気がしていて。」
「………なるほどね。確かにそうだね。…………俺も好きだな、この香り。なんだか、安心する。」
「本当?よかった。」
花霞は、この香りが選んでよかったと思った。白檀の香りがする部屋で、大きく息を吸い込んだ。清涼感がありながらも、どこか神秘的で少し甘い香りが、体をリラックスさせてくれる。そんな気がした。
「ん………何だか、今日はそのまま寝れるかも。………どうも疲れたんだ。」
「そうなの?」
「うん………。」
椋は小さく息を吐くと、ベットの中でゆっくりと目を瞑っていた。その様子を見て、花霞は少し嬉しくなりながらも、心配なって彼の手を見つめた。
赤くなった右手。
彼は一体何をしてきたのだろうか。
それが気になってしまうのだ。
「花霞ちゃん?寝よう…………?」
「あ、うん。電気消すね。」
花霞は部屋の電気を消して、ベットに入る。
すると、椋が優しく花霞を抱きしめくれた。そして、「おやすみ。」とキスをしてくれる。花霞も「おやすみなさい。」と返事をし、ゆっくりと目を瞑る。
その日の花霞はなかなか眠れずに、椋が少し寝てから起きる頃にようやく寝つけたのだった。