「…………こんな痛そうになってるなんて。……………椋さん、どうしたの?」
 「大事だよ。こんなの怪我の内に入らない。」
 「でも………。」
 「これは、俺がやりたくてやった事だから。」
 「仕事で?」
 「………違うよ。………花霞ちゃんは心配しなくて大丈夫だから。」
 「……………うん。」


 椋は、この傷の事を聞かれたくないのが花霞には伝わってきたので、その話しをするのを止めた。
 彼はどんな事をしてこうなったのかはわからない。けれど、これと似たような傷を花霞は見たことがあった。



 それは、少し昔の話。

 花霞と玲が恋人だったとき。玲を怒らせてしまった時に彼が思いきり壁を殴ったのだ。
 花霞は驚き、怖くて震えてしまった。その後、彼の手を見ると指の関節の部分を中心に赤く腫れていたのだ。


 それと、今の椋と全く同じ傷のように見えたのだった。