玲はサングラスの男に向かって、拳で殴りかかった。けれど、いとも簡単に腕を掴まれ、そのまま体の動きを使い、玲をまた床に振り落とした。腕が曲げられ、「いってててっっ!離せ!」と大声を出すしかできなかった。けれど、その声を聞いてか、男はすぐに手を離した。


 「悔しかったら必死に働いて、横領した金を全部返すんだな。これからは、働き口には連絡はしないでおく。」
 「…………くっ………。」


 力でこの男には敵わないとわかり、玲はサングラスの男を悔しさを込めて睨み付けた。その時、キラリと光るものが男の首にあるのに気づいた。
 ネックレスに小振りのリングがついていた。それを目にした時、玲は赤い宝石がついている小さなリングに見覚えがあることに気づいた。


 「………その指輪は…………お、おまえ、まさか………花霞の………。」
 「あぁ、やっとわかったか。そうだよ、花霞の結婚相手だ。」
 「………あいつ、本当に結婚したのか……。」
 「花霞から取った金を請求しに来たわけじゃない。そんな事をしても、持ってないだろうし。」
 「じゃあ、何を………っっ!!」


 男は片手で玲の胸ぐらで掴んで引き寄せた、そして、顔を寄せて今までで一番低い声で、玲に言葉を返した。