サングラスの男は、玲の傍に立ったまま、玲を見下しながら話し始めた。
 その話しを聞くと、玲は更に恐ろしくなってしまう。


 「おまえ、数年前に不正して会社の金をお横領しただろ。」
 「………なっ……。」
 「よかったな。そこ社長が気づかなくて。散々お金を取って、会社の経営が傾いてきたらさっさと辞めたんだろ?賢いな、宍戸玲さんは。」
 「それを、どこでっ!」
 「………あぁ、やっぱり本当だったんだ。」
 「っっ!!」


 この男は人を小馬鹿にしたように話すが口元が全く笑っていない。それが更に玲を怖がらせているのだ。

 
 「それをお前が今必死になって面接や履歴書送っている会社にリークしんだよ。だから、すぐに不採用になる。」
 「お前………何を………。」
 「あぁ、安心しとけ。その横領していた会社にも教えておいたから。その内連絡でも来るんじゃないか?よかったな、謝罪して返済する事が出来る。罪を認められるな。」
 「何で、そんな事してんだよっ!」


 まだ腹部は痛んだけれど、先ほどよりは大分ましになったようだ。玲はよろよろと立ち上がり、サングラスの男に向かって強く言葉を投げかけた。けれど、その男は怯むことなく、ただこちらを見ているだけだった。
 反応がない事や、散々やられっぱなしの事、そして横領についてバレた事で頭に血がのぼっていた。
 何故目の前の男がそんな事を知っているのか。どうして、玲が面接を受けたり履歴書を送った会社を知っているのか、そして、何故玲の名前さえ知っているのか。全くわからなかった。先ほどスマホを持っていたのも、たまたまとは思えなかった。

 自分の事をこそこそと嗅ぎ回っていたのか、と思うと更に怒りが増してくる。