すぐに仕事を見つけなければ、すぐにお金が尽きてしまう。貯金などほとんど出来ていないのだ。今、同棲をしている彼女はまだ社会人1年のため、お金はほとんど入れていない。


 「そして、佳奈はどこいったんだ?……最近帰ってくるの遅いな……。」


 茶髪の頭を強くかきむしり、苛立つけれど、それで落ち着くはずがない。缶詰だけでは足りるはずもなく、空腹が襲うがそれでも疲れから何か作ったり買いに行くのも面倒で、そのままソファに倒れた。

 部屋は荒れ放題で掃除などいつしたのか覚えていない。昔は綺麗だったのにな、と思い出すのは花霞が居た時だった。彼女は掃除もかかさなかったし、料理も上手かった。その頃は花霞も玲も若く、仕事もやっと慣れてきたばかりで忙しかった。玲も、その頃の仕事が1番長く続いていたのだ。あの頃は、ここの部屋にいると時間の流れがいつもよりゆっくりだったように感じられたのだ。
 玲の頭の中に、花霞がにっこりと微笑む姿が思い出され、ハッとして目を開けた。


 「あいつの金がもっとあったら………プレゼントしたアクセだって戻ってきてれば少しは苦しくなかったんだ。………くそっ!」


 玲は手を伸ばして、テーブルの上に置いてある照明のリモコンを取ろうとした。
 

 ピンポーン。


 来客を告げるインターフォンが鳴った。
 恋人の佳奈は鍵を持っているし、通販などで何かを頼んだ事はなかった。
 不思議に思いながも、重たい体を起こして、玄関のドアまで近づく。