21話「安眠効果には」




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 椋の看病のお陰で、花霞はすぐに元気になり次の日には仕事に行く事が出来た。
 仕事を休んだ日は、椋が早めに帰ってきてくれており、雑炊を作ってくれたり、買ってきてくれた果物を頂き、薬を飲んだらあっという間に良くなったのだ。
 椋には感謝してもしきれなかった。

 玲に会って、思い出まで傷つけられた花霞だったが、また助けてくれたのは椋だった。花霞が苦しんでいると来てくれる彼は、ヒーローそのものだな、なんて思ってしまっていた。

 
 彼から1週間以上経っているが、まだ薬指には指輪がなかった。クリーニングと修理には2週間ぐらいかかるようだ。手元にあの指輪がないと寂しくなってしまうこともあったけれど、そんな時は首元にある、彼の指輪を見たり触れたりする事にしていた。それだけで、笑顔になってしまうから不思議だ。彼の提案で、椋の結婚指輪をネックレスにして、寂しさを癒す事になった。彼の左手に指輪がないのも「何か悲しいな。」と椋に言うと、彼は「何もないのもおそろいでしょ?」と言われてしまった。椋には敵わないなと、花霞は改めて思った瞬間だった。


 そんな彼の首にも花霞と同じチェーンがついており、そこには小振りの指輪がついていた。椋の提案通り、彼に花霞の指輪を貸したのだ。玲の家から出てくる時、元彼氏から渡されたキャリーバックの中には持っていたアクセサリーの半分も入っていなかった。指輪は1つしかなくピンキーリングなので、かなり小さいものしかなく、椋には申し訳ないなと思っていた。けれど、椋は「可愛い指輪だねー。借りるね。」と、ニコニコしながら指輪にチェーンを通して首に下げたのだ。

 赤い石がついている小さな指輪をした彼は見て、自分のアクセサリーをしている椋の姿を見るのも何故か恥ずかしい気持ちになり、ドキドキしながら「似合ってるよ。」と、返事をするので精一杯だった。