7月。
新しい学校生活にも慣れてきて、クラスのほぼ全員の人とは話したかなーというくらいの時期だ。夏休みも近づき、みんなすこし浮き立っている。僕もその一人だ。

「なぁ夏休みこの4人でプール行かない?!」
さっきまで何かを考え込むように卵焼きをつついていた紘輝が不意にそう叫んだ。
「おわっ!急に立ち上がんなよ。あとうるせぇ」
慧が呆れたように言う。
「すまん」
笑って謝りながら席に座りなおす。顔を見るとすんごくにやにやしている。俺、いいこと思い付いたっしょ!誉めてくれていいんだぞ!っていう顔だ。
「おー、いんじゃね?俺もどっか遊びいきたいと思ってた」
のんびりとした口調で柚が同調する。
「僕もいいと思う。夏暑いもんなぁ、さすがこーちゃん」
さすがって言葉に紘輝はますます得意そうな顔をしる。
「ふふっ」
思わず笑ってしまった。
「あ、何で笑ったんだ!?今!」
「何でもないよ」
「絶対ある!なー2人とも!今瀬名、絶対俺のことバカにしたよなー!?」
「単純って思われたんじゃね」
なぁ?というふうに慧は僕に視線を送ってきた。気まずい顔をすると慧はぷっと小さく吹き出して、また弁当に視線を戻した。
「おいーどういう意味だよー!なぁー!」
もぐもぐもぐ。
「3人とも食ってばっかいないで人の話聞けよー…」
「とりあえずプールは決定?」
慧が面白がってわざと話をさえぎる。
「俺の話聞けー!」
紘輝のその一言で3人は堪えきれずに一気に吹き出した。それにつられて紘輝も笑ってしまう。

「じゃあまた放課後連絡するわ」
じゃーなーと口々に昇降口で言い合い、みな個々の部室へと向かう。部活が終わればあとは帰宅するだけだ。

夕食も風呂も終わり、ぼふっとベットに横になると携帯を開く。4人のトークグループに何件か通知が溜まっていた。
『プールいついく?』
『俺、8月の前半なら行ける』
『俺も』
『瀬名は?』
プール行くことになったんだ。やば、返信しないと。「僕も大丈夫だよ」っと。
するとすぐに返信が返ってきた。紘輝だ。相変わらず見るのが早い。
『じゃぁ5日とかどう?』
「いいね」っと返信を打ち、携帯を閉じる。プールかぁ楽しみだなぁ。思えば中2の時以来行っていない。
水着買わなきゃな、などと考えているうちに眠りの中へと落ちていった。