可愛いなと、ずっと思っていた。

入学式の日、無事式が終わり自分の教室へ行こうとしたときだった。
「…っ」
誰かとぶつかった。すみません、と反射的に言い、相手の顔を見ようと振り返ると、相手とぱちと目があった。俺の肩くらいまでしかない小さいそいつは、ちょっと怯えたような目をして、ごめんなさいと言ってきた。トクンと心臓が鳴る。
「いや…大丈夫…」
戸惑いを隠せずに返すと、その小さいやつは俺の言葉を聞きホッとしたのか、すこしぎこちない笑みを浮かべるともう一度頭を下げそそくさと自分の教室へ向かっていった。

かわいいな、なんて。男相手になに考えてだ、キャラにもない。

これが蒼との出会い。

この先に待ち受ける地獄の日々なんて、このときの俺は想像すらしていなかった。