「ど、……どうして私の名前を知っているんですか?」

私は震える唇から言葉を出した。

「あ、やっぱり島川さんであってたんだ」

男は私の反応を見て、にこりとする。

「はい、あってます‼ ……でもどうして私のことを知っているんですか?」

「あはは、それはねー」

男はそう言ってゆっくりと私に近づいて来る。

段々と男と私の距離が縮まっていく。

「え? え?」

「俺もね、実は図書委員なんだよ。しかも委員長なの」

「……そ、そうなんですね」

つまり図書委員の名簿とかで私の名前を知っていたということか。

――でも、それだったらおかしい点がある。

図書委員の名簿には確かに私の名前は入っているけど、顔写真は貼っていない。だから私の姿を見て名前が分かるのはちょっと変だ。

「それでね、委員長は仕事内容に名簿の確認があるんだけど、確認の時に毎回図書委員なのに委員会に参加していない島川苺っていう人が気になっていたんだよね。……絶対に体調不良とかではなく、サボりだろうなって」

私に近づくのをやめずに、男は言った。

「あ、い、いや、それはですね……」

私、やっぱり一回も図書委員の仕事をしていなかったのか‼

「――どうして君のことが島川さんだと分かったのか教えてあげるよ。さっき俺が図書委員なのって聞いたら君は認めた。だけど俺は君の顔を今まで知らなかった。……ということは君が図書委員をいつも欠席している島川さんかなって思ったんだよねー」

ニコニコと嬉しそうに笑いながらそう言った男。

私の気になった点を教えてくれた。言ってもいないのに。私の考えなんてお見通しみたいだ。

「さ、流石の推理力ですね」

「いや、別に大したことじゃないよ」

「――ところで、さっきから何で私に近づいているんですか? このままだと……」

――息がかかる距離まで近づいてしまうかもしれないのに。

私は口では言わず、心の中でそう思った。