「俺に恩を感じているのはわかる。でも君は助けられて当然の状況だった。そして俺は助けるべき立場にある人間だった。だから君は何も気負う必要はないんだ」

「もちろん助けて頂いたことには恩を感じています。でも、貴方ために何かがしたいと感じたのは別の気持ちです」

「別?」

「貴方の役に立ちたいんです! お願いします。私、なんでもします!」

「なんでもなんて、軽々しく言うものじゃないよ。俺が悪い人間だったらどうするのかな?」

「それでもいいんです!」

 サリアと名乗る少女の眼差しはどこまでも真っ直ぐだった。
 俺が何者かも知らないくせに、疑おうともしない。改めて諭そうとしたところで聞く耳を持たなかった。
 仕方なく俺は妥協案を提示する。

「君が働けるような年齢になったら屋敷で雇うことは出来ると思うよ」

「それは、貴方の役に立てる仕事ですか?」

「そうだね。俺たちは屋敷で働く人たちがいてくれるから不自由なく生活出来ている。だから君が働いてくれるというのなら、遠からず俺は君に助けられているよ」

「でもそれは、貴方そばにはいられないですよね? 私は貴方のために働きたいんです。なんでもします。だから、お願いします。どうか私を雇って下さい!」

「こう言ってますけど、どうします?」

 自身が危険な立場にあることも伝えたが、どんなに言い含めても諦めようとはしなかった。名前さえも知らない俺のために働きたいと言って譲らない。
 見かねたジオンが新たな提案をする。驚くべきことにジオンは少女が使えるのではと言いだした。何があっても俺を裏切ることのない人間は必要だと。