「助けてくれたの、貴方だって聞きました。ありがとうございました」

 幼い割にはしっかりした受け答えだと感心させられる。自分も可愛げがないとはよく言われるけどね。

「俺は何も。でも、君が無事で良かった」

 そう答えれば、少女は信じられないという眼差しで見つめ返していた。

「どうしたのかな?」

「私の無事を、喜んでくれるのですか?」

 信じられないと語る瞳に、安心させるようにもちろんと言ってやる。

「俺だけじゃないよ」

 窓の外を見るように言った。あの鳥が知らせてくれたこと、そばから離れようとしなかったことを教えた。

「君のことを守ろうとしたんじゃないかな。君は女神に愛されているんだね」

「うそ……」

 即座に嘘だと否定する少女は、幼いなりに色々なものを目にしてきたのだろう。
 可哀想だとは思うけど、深入りしても出来ることは限られている。これといって特別なことも見受けられないのなら、後は任せて立ち去るべきだろう。
 別れを告げようとしていたことを察していたのかもしれない。それよりも早く少女は言い募った。

「どうか私をそばに置いて下さい!」

「え?」

 意味がわからなかった。
 背後ではジオンがまるで求婚のようだと茶化していたる。
 笑うジオンを睨んだ少女は、そんな大それたことをするはずがないと叫んでいた。

「私、貴方に仕えたいです! 貴方に必要とされたい。貴方のために働きたいです!」

「熱烈だねえ」

「ジオン」

 茶化すようなジオンを嗜める。突拍子もない発言ではあるが、少女が本気であることは伝わっていた。ならば幼い相手でもきちんと告げておかなければならない。