犬でなくともあの子は気づいてくれる?
 いっそ人間に生まれ変わるのはどう?
 でも人間は成長するの期間が長すぎる。あたしはすぐにでもあの子のそばに行きたいの。一人で寂しくなかったって、そばにいてあげたいのよ!

「成長が早くて、そこそこ長生きで、なんかこう……同じ白い生物はいないの?」

「あ、姉上様! この世界では白い鳥は神の使いという伝説があるらしいですよ。これ、いいんじゃないですか!」

 そんな協議を経て、なんとか転生。
 待っててと意気込み、巣から飛び立ったあたしが目にしたのは、大切な女の子が誘拐される瞬間だった。

「なんか攫われてるし――!!」

 またしてもあの子を取り巻く運命は過酷だった。
 でも今回は、あの時とは違う。

 ここにはあたしがいるんだから!

 あたしがなんとかしないと、さーちゃんを助けないと!
 でも鳥の姿で出来ることなんて限られてる。だからあたしは助けを呼んだ。ちょうど近くを通りかかった貴族っぽい馬車を強引に止めてね。
 馬車に乗っていた子どもを見た時は驚いたわ。
 幼くはあるけど、かつてあの子が好んでプレイしていた乙女ゲームの爽やか系王子様とうり二つなんですもの。
 コンビニのお兄さんや乙女ゲームであの子の好みは把握済みなのよ。

 この子どもがあの子を幸せにしてくれる人間であればいい。
 あたしはそう願ったわ。
 まさかその人の密偵になるとは思いもしなかったけど……。
 だってさーちゃんの可愛さをもってすれば、普通に考えて妃ルートよ!? 少し身分は足りないかもしれないけど、そこは王子様がなんとかしてくれるはずだったの。寵妃ルートが始まると思っていたのよ!

 それなのに、あの子が願ったのは自分の力で運命を切り開くことだった。
 まったく、格好良いったらないわね。格好良すぎで惚れ直しそうだわ。仕事に打ち込むその姿勢も、あたしの妹にも見せてやりたいくらいよ。

「見てる? 見てるわよね、愚妹!」